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<花に想う>ツユクサとインパチェンス、そして蚕の話 [Flower&My Garden]

 今回は思い出話です。

 娘が小学1年生の時、「蚕」を自宅で育てて繭から絹糸を取る、という学校からの宿題がありました。

 我が家の「虫愛づる姫」は、せっせと桑の葉を食べさせてはお掃除をして可愛がっていました。
 気味悪いとか怖いとか一切思わない子で、「シャクシャクモシャモシャ食べてるぅ」と嬉しそうに観察し、とうとう繭を作り始めたら、「すごい、すごいねぇ」と目を輝かせ・・・。

 そこで、あの子は知ったのです。
 繭が出来上がったら、10日ほど後にそのまま煮られてしまうことを。
 「まだこれから、繭から出て来るんだよ!ちゃんと大人の蛾になって!眠ってるだけなんだよ;」

 涙を浮かべて訴える娘の様子に困った私は、7、8個あった繭のうち、一つだけそのままにし、残りを学習の手順通りに絹糸を取る、ということで説得することに。
 「成虫になってもね、翔べないし、何もご飯は食べられないのよ。お蚕さんはね。
  卵を産ませるなら話は別だけど、繭を作って人間のお役に立って、
  その命を終えるの。だから『お蚕さま』と、感謝を込めて呼ばれているのよ。」
 娘は、例え成虫になっても何も食べずに死んでいくだけ、との説明に少なからずショックを受けたようでしたが、どうにか納得しました。(実際はずい分時間がかかりましたが;)

 そうして(心で手を合わせながら)鍋で煮た繭から糸繰りをし、艶のある白いその細糸を撚り合わせて、絹糸の刺繍糸を作りました。
 少しでも、何か形あるものにして残した方が良いような気がして。
 (そうでもしないと蚕たちに申し訳ないし、宿題のためだけに糸を取って無駄にしては、娘の心に悲しい印象だけを残すように感じる、という私の心境だったのです。)

 さぁ、貴重なこの刺繍糸を使って、子どもが出来ることって。。。

 まず、草花で染めました。

       
                                         ツユクサ

       
                                      インパチェンス

 ツユクサの花の青は、日本画の下絵を描くのに利用するくらいですから、当然色は抜けていくだろうと思いましたが、庭に丁度咲いていたので「まぁこれでいいか~」と。
 そして、もうあと2色のピンクと黄緑を、やはり真っ盛りに咲いていたインパチェンスの花と葉から色素を煮出して作り、それぞれに糸を分けて入れ、軽く煮たあと浸け込んだり揉み込んだりしました。
 単純な染め方ですが、薬品を使わないので、娘も楽しみながら染められました。

 そうして出来上がった3色の刺繍糸で、娘が頑張って仕上げたのが、このクロスステッチのお花です。

       

 11年も前の作品なので、見事に褪色しています;
 かつては、向かって左の花がインパチェンスのピンク、右のがツユクサからとった青っぽい色で、そして茎と葉はインパチェンスの葉っぱからの黄緑色でした。

 厚紙にキルト芯を張り、布でくるんで額縁に仕立てた、飾れるようにするこの仕上げは私がやりました。
 何年かは飾ってあったのですが、その後娘が仕舞いこんでいたのを、昨日漸く探し出してくれました。
 ・・・懐かしい^^

            

 それから、1匹だけ羽化したお蚕さん。
 それはそれは、真っ白で神々しくさえ思える綺麗な姿でした。
 翔ぶことも食べることもなく、それでも元気そうに、草木を入れた天井が開放された箱の中を歩き回り、
思ったよりもかなり、ずっと長生きでした。
 娘はその運命を思ってか、少しつらそうにはしていましたが、しょっちゅう様子を見ては話しかけたりしていました。
 (かく言う私も、日に何度も様子を見に行きましたが。)
 やがてある朝見ると、箱の隅に静かに横たわっており、寿命が尽きていました。

 このカイコ蛾の小さなお墓は、今も庭の片隅のアカマツの根方にあります。

 夏も間近になり、今年もツユクサやインパチェンスが庭のあちらこちらで咲きました。

 それらの草花を眺めていると、娘と草木染の真似事をしたことや絹糸を繭から取ったこと、そうして1匹だけ羽化したカイコ蛾の、真っ白な姿とその命のことが思い出されます。 


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畑の帽子

素敵な思い出の額ですね。
そして、素敵なお母様ですね。
クロスステッチのお花。微妙に色合いが違って、別々に染めたことがわかります。代わりの無い世界でひとつだけの貴重な思い出の品、また大切にしまわれるのでしょうか。
by 畑の帽子 (2006-07-11 19:11) 

miho-rin

おかいこさんって 呼んでましたよね。
私も小学校の時に 飼ったことを思い出しました。
(今 考えるとあのうにうにしたのは だめなんだけど!) 
成虫になっても 何も食べられないっていうのは
ここで初めて知りました。
そうだったんですねぇ 
素敵な刺繍、宝物ですね☆★☆
by miho-rin (2006-07-11 19:36) 

タックン

お蚕さまはすばらしい時間をお二人に与えてくれたんですね。
最後まで見届け、お墓まで作られて・・・ホント素敵なお母様です!
昔、親戚の家で飼っていたので、あの手に取ったときのひんやり感と
桑の葉を噛む音など思い出しました。
by タックン (2006-07-11 20:58) 

心温まるお話でした。
感動して、体が震えています^^
学校教材にして欲しいような内容ですよ。
素敵な刺繍と思い出、これからも大切にしてください。
by (2006-07-11 21:02) 

eritaro

1年生の宿題ですか? すごいですね。
可哀相だと泣かれたお嬢さまの気持ちとしっかり向き合われたこと、本当に素晴らしいです。
お庭の花で草木染めというのも素敵。
きっと宿題以上のものが、お嬢さまの心に残ったことでしょうね。
by eritaro (2006-07-11 21:13) 

親子の密な関係が素晴らしいです。
幼少期からの会話は体験は、大きな財産ですね。
深くて思いやりのある大人になると確信します。

きちんと形にして 残してあげたことは、
お母さんへの信頼で一杯になったことでしょうね。
いいお話です。
by (2006-07-11 21:44) 

パキちゃん

>畑の帽子さん  nice!&コメントをありがとうございます^^
い、いえ; 私は子育てではいつだって「これで良かったのかなぁ」と思うことばかりで。。
微妙な色の違いを判って頂けて嬉しいです^^
これは暫く飾ってから、また仕舞っておくことにします。
by パキちゃん (2006-07-12 04:36) 

パキちゃん

>みほさん  nice!&コメントをありがとうございます^^
娘は「何も食べない」と聞いても、蜜がある花や柔らかな葉や水をこっそり箱に入れては、
「何か食べないものか」と見ていたようでした。(その気持ちも、解る気がしました。)
当時は思いもしませんでしたが、今になってみれば宝物となりました☆★☆^^
by パキちゃん (2006-07-12 04:47) 

パキちゃん

>タックンさん  nice!&コメントをありがとうございます^^
(実は、私も繭のまま煮るのに少々抵抗がありました。)
娘は感受性が強い子だっただけに、私としても考え込みましたが、
良い思い出となったのは、お蚕さまのおかげだったのですよネ、きっと^^
by パキちゃん (2006-07-12 05:07) 

パキちゃん

>シンナツさん  nice!&コメントをありがとうございます^^
え~っ?教材になんて、そんな(例え冗談でも)お恥ずかしい;
子どもには筋を通すように気をつけていても、
心の中は暗中模索、試行錯誤、五里霧中の私ですから。 
でも、尚更いい思い出になりました。ありがとうございます^^
by パキちゃん (2006-07-12 05:27) 

パキちゃん

>eritaroさん  nice!&コメントをありがとうございます^^
生き物の飼育と伝統的な産業への理解をもつためなのでしょうね。
よりによって、ムシさん大好きな娘にこの宿題か。。。と思いましたよ~;
褪色覚悟でならば、自宅の草花でも木綿布などを簡単に染めて、けっこう楽しめますよ^^
by パキちゃん (2006-07-12 05:54) 

パキちゃん

>風子さん  nice!&コメントをありがとうございます^^
そのようにお褒めに預かると、イメージが崩れないようにしなくては!
とカッコつけたくなってしまいます;
現状は親子喧嘩や衝突も日常で、今回久しぶりにこの作品を手に取ったら
『あの頃は可愛かったなぁ』と当時の娘の表情や言葉がまざまざと思い出されました^^
by パキちゃん (2006-07-12 06:05) 

お散歩爺

繭なんてあまり無いから楽しく想い出深いものになりましたね。
私も小さい時はお蚕さんを育てましたよ。 糸を取ったり染めたりはしなかったけど、大人になっても飼ったのは忘れないですね。
by お散歩爺 (2006-07-12 06:55) 

とても素敵なお話ですね^^
我が家とは大違いです。
(家の息子は、繭作りのお蚕さんの姿を見て
「イナバウアーだ〜〜〜」と・・・^^;)
素敵なお嬢様には、やはり素敵なお母様♪という事ですね。
お子様と向き合う姿勢に、とっても感動しました!!
by (2006-07-12 13:53) 

パキちゃん

>旅爺さん  nice!&コメントをありがとうございます^^
昆虫は人間とは全く違う生態なので、見ていて興味が尽きませんよネ。
繭玉を手にとって見ると、「お蚕さま」、と大切にする気持ちが実感できます。
化学繊維にはない温もりが感じられますし^^
by パキちゃん (2006-07-12 23:13) 

パキちゃん

>ki_no_koさん  nice!&コメントをありがとうございます^^
おお~、確かに!イナバウアー状態w 私はモスラの幼虫が東京タワーに
糸をかけて繭になった場面を思い出してしまいました^^ (時代が~;) 
子どもはいつも真剣なので、物事によっては納得してもらうように真剣に接していました。
by パキちゃん (2006-07-12 23:36) 

たらこ太郎7

お蚕さんは、テレビや本の世界だけで実際に見たことはありません。が、拝読させていただき、あたらまえて自然への感謝、そしてその思いを代々伝えていく重要さを再認識しました。コメントで「学校教材に!」とありましたが、確かに非常に素敵というか大切なできごとだと思います。
by たらこ太郎7 (2006-07-13 20:12) 

パキちゃん

>rueさん  nice!をありがとうございます^^
by パキちゃん (2006-07-13 23:41) 

パキちゃん

>たらこ太郎7さん  nice!&コメントをありがとうございます^^
養蚕業もだんだん縮小されているようですが、人の産業・文化は元々自然と密接なのだ
と実感させられるいい経験でした。
私は子どものおかげで、ずいぶんいろいろ勉強させてもらいました^^
by パキちゃん (2006-07-14 00:11) 

人間のために犠牲になる動植物の多さにいつかは気付くのですよね。
それをどう受け止め子供に伝えるか、親の責任でしょうね。
by (2006-07-14 06:18) 

パキちゃん

>にの♪さん  nice!&コメントをありがとうございます^^
そうなのですよね; その子どもによって感じ方が様々でしょうから、
一概に学校の先生も、説明や指導をしにくく思っていらっしゃるかも知れません。
サラっと手順が図説されたプリントを見ながら、「う~ん。。。」と黙り込んだ私でした;^^
by パキちゃん (2006-07-14 11:01) 

命について親子で考える、いえ命に向き合う貴重な体験をしたのですね。
パキちゃんの対応が素晴らしいです。
いつか、このお話、園で子ども達にしても良いですか?
by (2006-07-23 10:46) 

パキちゃん

>プリンちゃん  nice!&コメントをありがとうございます^^
そのように言って頂くと照れちゃいますが・・・;(ホラ、シャイだから、私。)
でもお子さん達に何か伝えられるお手伝いになるのなら、嬉しいことにも思えて来ました。
このような思い出話でもお役に立つならばありがたいことです^^
by パキちゃん (2006-07-23 21:11) 

パキちゃん

>春分 さん  nice!をありがとうございます^^
by パキちゃん (2006-08-06 08:00) 

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