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「白夜行」~東野圭吾の傑作と名高い作品を読む [孤読な時間の友(書籍)]

 「白夜」と聞いて、あなたはどのようなイメージをもちますか?

 美しい、幻想的、不思議、・・・・いろいろ浮かぶと思いますが。。。
 でも、私にとってその言葉がもたらすイメージは、「重苦しい」「不安」「孤独」などの負のそれから始まり、かなりベクトルが移行した終わりの方で、せいぜい「非現実」「幻」「薄明かり」のような、まあ一般的な「白夜」のイメージで落ち着く感じです。
 これ(=負のイメージが先立つこと)には、思い当たるフシがあります。
 ひとつは、子どもの頃、北欧を旅した両親が帰国後に、「白夜だと夜中でも子どもが外で遊んでいるし、昼夜の感覚が麻痺した妙な感じになる」と話すのを聞いて、『夜ゆっくりと眠れないなんて怖ろしいことだ』と直感的に思ったこと。
 あともうひとつ、中学生の頃に読んだ五木寛之の「白夜物語」。
 これらの影響が多分にあるように思います。

 前フリが長くなりました。
 
白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫) 作者: 東野 圭吾 出版社/メーカー: 集英社

  •                   発売日: 2002/05  メディア: 文庫

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局事件は迷宮入りする。被害者の息子、桐原亮司と、「容疑者」の娘、西本雪穂─暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年・・・・・。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長編! [文庫カバー裏の紹介文を転載]

 身近にはあまりないかもしれないけど、世間では時々見聞きする類の事件。
 作者は、それらの冷徹で忌まわしき犯罪を、ある意味淡々と描写し続けながら、次第に読む者を疑惑とやり切れなさの沼の底へと引きずり込んでいきます。

 

 瞠目に値するのは、紹介文にもあるように、その構成。
 例えば主人公の二人について、途中から読者は「彼らは互いに分身のような存在なのではないか?」と思い至るわけですが、最初の事件から19年間にも渡る長いストーリーの中で、彼らは一度たりとも言葉を交わすどころか同じ場面に登場することも、読者を含む第三者に互いのことを語ることすらありません。

 やっと、やっとその場面が来る!

 一つのシーンで二人を確かめることができる!

 彼らを追う刑事とはまた別の視点で、残り少ないページ数を気にしながら、ザワザワと逸った気持ちで息もつかずに読み進むラストシーン。

 そこで私たち読者が突きつけられるのは。。。。
 とにかく、まったく直接的な描写が無いにもかかわらず、こんなにも二人の魂の絆を浮き彫りにしてしまうこの才能、凄いです。

 

 それから、随所に暗示や伏線が張られています。
 これについては、読んでいて早い段階に、『おや? これはもしかすると、作者はこの作品を、単なるミステリーやサスペンスとして読者に捉えてほしくないのでは?』と思わされました。

  (ここより、一部内容について具体的に抜粋していますので、お読みになりたくない方は飛ばして、かまわない方はマウスドラッグで反転させてお読み下さい。)

 事実、私は途中から、「大人の罪によって魂を穢され、冷え切った命を抱きしめて、薄明かりの光の中を彷徨う子ども」の姿が二人の向こうに透けて見える気がして、彼らから命題を示されているように感じていました。

 主人公の一方、桐原亮司が唯一自分について真実のことを他人に語り、人間らしい言動として印象的なのが、「事業」仲間の友彦と弘恵に語った「俺の人生は白夜の中を歩いているようなもの・・・」という言葉と、その直後に彼らに結婚をすすめて、自分の特技の切り絵で手をつないでいる男の子と女の子(小学生らしい)を作ってプレゼントする場面。

 そしてもう片方、唐沢(西本)雪穂のそれはと言うと・・・、やはり自分の事業の右腕的存在の夏美に向かい、真摯な思いを込めた瞳で見つめて言った「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。・・・」の場面。

 亮司は直喩、雪穂は隠喩ですが、この小説のタイトルの意味とテーマが如実に表れている箇所と言えます。
 

 ね、やっぱり「白夜」のイメージは・・・・
 と、前フリに戻すのは(戻したいけど)やめて、おしまいにします;^^

 太陽の光が何を喩えているのか、じっくり思いを廻らせて余韻に浸るのもよいかと思います。

 

 

[かわいい] 

 

この「白夜行」を原作に、2006年にはTBSテレビでドラマ化されていたようです。
主演俳優陣が当時話題の人達だったようで、こちらをご覧になった方も多くいらっしゃるでしょうね。
どうもドラマでは、原作のような構成ではなく、主人公二人が会っている場面などもあるらしいです。

 

ふ~ん。。。。そなの?・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そりゃね、テレビだから、主人公が全然会いもしないなんてウケないよね~ でも、それって・・・・・・・・・・・・・・・

 

なんか、また天邪鬼が頭をもたげて来たので、気をつけなくっちゃ;

コメントするなら、自分の目で確認してからじゃないと。

 

まるで、そんな私のためのような再放送があるというお知らせ、入れときますね^^

 

今年末  12/28(月) ひる12:00~午後9:55 [全11話一挙放送]

 

予定だそうです。

詳しくはTBSのサイトで。

 

私としては、きっと先に原作を読むのが正解ではないかと、そのような気がしますm(_ _)m

 


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コメント 6

amane

東野さんの作品は ホントに淡々と綴られていて
たまに心がヒヤッとすることすらありますが 
何かを 考えさせられることが多いので
よく購入しています。
by amane (2009-12-03 00:08) 

タックン

まず 本を読んでみようと思います^^
面白そうですね~
by タックン (2009-12-03 19:58) 

パキちゃん

りぼんさん、ぼんぼちぼちぼちさん、ご訪問ありがとうございました^^


by パキちゃん (2009-12-10 17:24) 

パキちゃん

amane さん  ご訪問ありがとうございました^^
けっこうサラッと読めそうで、実は深いところを示しているような作品が多いですね。
今「分身」を通勤の間に読んでいるのですが、なかなか先に進みません。
すぐに爆睡してしまうので・・・(>_<)


タックン さん  ご訪問ありがとうございました^^
長編ですが、ぜひ読んでみてください。
読了直後は、いろんな思いが渦巻いて、暫くするとなんだか得した気分になりますよ^^

by パキちゃん (2009-12-10 17:31) 

パキちゃん

しまどっちさん、春分さん、水郷楽人さん、ご訪問ありがとうございました^^

by パキちゃん (2009-12-11 12:58) 

パキちゃん

スーさん、ki_no_koさん、ご訪問ありがとうございました^^


by パキちゃん (2009-12-19 21:50) 

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