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「ヴィヨンの妻」~黄桃からの思考連鎖 [孤読な時間の友(書籍)]

 先日、黄桃が贈られて来ました。
 たっぷりと蜜を含んだ頃合いを見計り、いただきました。
 白桃主流の昨今、黄桃を口にしたのは何年ぶりでしょう。
 格別に美味しく感じました。



 黄桃、オウトウ、と音を意識しながら食べたせいか、時季は違いますがもう一つの「オウトウ=桜桃(さくらんぼ)」が思い浮かび、更には「桜桃→桜桃忌→太宰治」と繋がって、急に「ヴィヨンの妻」を読みたくなりました。

 読みたくなったのが「桜桃」でなく「ヴィヨンの妻」だったというのが、思考回路の不思議なところですが、どうやら私の中でこの二作品は、セットになって心に刻まれているもようです。

 (最初に「桜桃」を読んだとき、すっかり桜桃を黄桃と勘違いして、最後の場面での主人公の言葉から、『黄桃を糸でつないで、首飾り・・・さぞや重たいだろう』などとトンチンカンなことを考えた私です~;)


ヴィヨンの妻・桜桃・他八篇 (岩波文庫)

ヴィヨンの妻・桜桃・他八篇 (岩波文庫)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1987/10
  • メディア: 文庫

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1950/12
  • メディア: 文庫

 私が持っているのは、新潮社の文庫本の方です。従いまして、以下に記した感想の中にある解説云々のくだりは、新潮社版の「ヴィヨンの妻」におけるものです。
 一連の太宰作品を読み終えたのは、小学の高学年生から中学生にかけてでした。
 未熟な私が、最も印象的に感じかつ気に入った作品が、この短編の「ヴィヨンの妻」。
 子どもなのに、笑っちゃいますw
 当時の私にとって、「人間失格」あたりはあまりにも痛ましく重かったように覚えています。
 そして今、また静かに読み返した太宰作品の数々・・・・
 やっぱり「ヴィヨンの妻」が一番好き。 
 一番初めに読んだ印象とか直観とか、けっこう変わらないものなのか。
 それとも、この作品が傑作ということか、私が成長していないということなのか。。。;^^
  
 感想は、
 こんな亭主だったら、私ならどうするだろう?
 ここまでしてくれる妻は、今時いないだろう。
 まあ、そのように様々に思って読むわけですが、要するに小説全体の雰囲気が好きなのです。
 「ヴィヨンの妻」の世界まるごとが、欺瞞あふれる世の中で、消え入りそうになりながら小さく点っているガス灯の光のような ─
 とでも言いましょうか。
 うーん、何とも言い表しにくいです。
 はっきりとしているのは、登場人物の心理描写に、「さすが」と感じ入ること。

 それから、太宰作品=デカダン と考えられている向きもありますが、この本の解説(亀井勝一郎)にもあるように、私もそれは違うと思います。
 デカダンスの風体を成していながら、なお倫理や真実、世の中や人生に真摯に向き合った太宰治その人を、明確に浮かび上がらせているように感じるのです。

 知人が太宰治の縁故のため、語りたいことを語りづらい面もあるので、簡単ですが「ヴィヨンの妻」についてのご紹介(になってナイ?)を終わります。
 読書の秋、気が向かれたら読んでみてください。


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コメント 31

黄桃 私も 好きです♪ 
桃っていうと 子供の頃、体調が悪くなると
出してもらったなぁ。。。ってことでした
高尚な太宰治までいかずに 食い意地張ってますね(^^;
by (2007-09-14 22:25) 

実家に帰ったとき、黄桃を食べました。
黄桃は珍しいですね。

私も中学時代、たくさん本を読みました。
すご~く背伸びして、うちにあった文学全集を読みあさっていました。
パキちゃんのように、心に残っていないのが…惜しい?
文字を追っていただけで、ちゃんと読んでなかったんだね。

でも、太宰治を読んだのは、高校時代かな。
さすがに小学校の時は読まなかったww
by (2007-09-15 06:30) 

スー

黄桃の首飾り、シュールで面白いですね。
by スー (2007-09-15 08:49) 

パキちゃん

☆みほさん ご訪問ありがとうございます^^
私も食べながら思い至ったので、同じですよw
桃には昔から、長寿や魔除けの意味がありますよね。
それで病気の人に食べさせることが多いようです。
「早く治るように」と思いやる人の願いが、桃のパワーを引き出しているのかも^^
by パキちゃん (2007-09-15 10:35) 

パキちゃん

☆月夜さん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2007-09-15 10:36) 

パキちゃん

☆ホシさん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2007-09-15 10:37) 

パキちゃん

☆きぃ* さん ご訪問ありがとうございます^^ 
by パキちゃん (2007-09-15 10:39) 

パキちゃん

☆プリンちゃん ご訪問ありがとうございます^^
小学生の時は小学生なりの解釈でしたよ、やはり;^^
今回は潜在的に「家族」「親と子」などのキーワードが頭にあって、「オウトウ」から太宰治に繋がった感じで、いろいろ読み返してみて良かったです。
・・・って言うか、読書の時間をもてたのが嬉しかったです。
by パキちゃん (2007-09-15 10:41) 

パキちゃん

☆スーさん ご訪問ありがとうございます^^
子どもの頃からボケてるところがあるのですよね、私は。
山伏がしているような、大きな玉の首飾りみたいなのを想像しました。
変わったこと考える主人公だなぁ、なんて;^^
by パキちゃん (2007-09-15 10:45) 

畑の帽子

黄桃を缶詰以外で食べたことがありません。
外見は ネクタリンですね。
ネクタリンなら たくさん頂いて食べたのですが…。
先日も スーパーで 黄桃にするか梨にするか迷って なじみのある梨が勝ちました。 ^^;

実は ヴィヨンの妻も 桜桃も読んでいません。(少なくとも 記憶に残っていません。) 今 紹介文を読んで ちょっと読んでみる気になっています。  
by 畑の帽子 (2007-09-15 23:15) 

秋の本ひとつ決まりました。(笑)
読んだことが無いのでぜひこの秋のと思います。
黄桃も食べたことが無いような記憶にないだけか
それすら記憶にない・・・歳かな・・(涙)
by (2007-09-16 11:02) 

パキちゃん

☆畑の帽子さん ご訪問ありがとうございます^^
梨の季節になってきましたね。
長十郎系も二十世紀系も、どちらも美味しくて好きです^^
太宰治の小説では、「斜陽」「人間失格」などが代表作といわれています。
いずれも結構一気に読めますが、短編でさらっと読める表題作がおススメです。
by パキちゃん (2007-09-16 19:39) 

パキちゃん

☆にの♪さん ご訪問ありがとうございます^^
私なども、他人の記憶を、いつの間にやら自分の記憶と思い込んでたり・・・
かなり危険領域に達しつつありますw
黄桃は、その名の通り皮も果肉も黄色くて、白桃とはまた異なる風味です。
畑の帽子さんから頂いたコメントにもあるように、缶詰によく使われます。
太宰治の作品を、単に私小説とみるか、私小説を装う諧謔の内に、共感できる何かを見出すか・・・
人によって好みの分かれる作家かも知れません^^;
by パキちゃん (2007-09-16 20:14) 

soiree

ヴィヨンの妻、私も読んでみたくなりました。さっそく明日にでも本屋に行こうかな。

黄桃は缶詰でしか食べたことがないのでどんな感じなのか気になりました。白桃とはやはり別物なんでしょうか?
by soiree (2007-09-17 00:49) 

パキちゃん

☆soireeさん ご訪問ありがとうございます^^
太宰治の一連の短編は、総じて好きです。一見懦弱な感じしますけどね。
したたかさと脆弱さ、優しさと優柔不断、批判と共感、自己矛盾を含んだニヒリズム・・・
好悪綯い交ぜの中、ああ、世の中とはこういうものかも知れない、と思わせられるところが「いいなぁ~」とw 
黄桃は白桃とは違って、よりコックリした味です。(意味不明;)
by パキちゃん (2007-09-17 15:28) 

パキちゃん

☆畑の帽子さんへ  
 先日頂いた↑コメントへの、私の返事申し上げた冒頭についてですが・・・
「梨の季節」は8月から9月の初旬、夏なのですね。
自分が秋に食することが多いもので、梨=秋と勘違いしておりました。
 (秋に食べるのは洋ナシでした) m(_ _)m
by パキちゃん (2007-09-17 15:32) 

畑の帽子

夏なんですか? (@o@;)
とりあえず 生活実感的には秋という気になっていました。
梨の季節 と 旬 と 出回る時期 とは 微妙に違うのでしょうか?

このことを考えていたら 昔 季語と暦で悩んだことを思い出しました。
(いや 今でも…)    ^^;
by 畑の帽子 (2007-09-17 21:59) 

パキちゃん

☆畑の帽子さん
 お返事ありがとうございます^^
 梨は、実に関しては「季語」で言うと、「秋」に入るようですね。
 私が「え?夏のものだったの?」と思ったのは、この連休で梨狩りなどに行ってみようかと調べたところ、どこの果樹園もすでに終了していたためなのです;
 (そう言えば、調べたのはこの近辺だけでした;)
 でも、そのように考えていくと、産地によってはまだこれからということで、「秋の味覚」でよいのでしょうね、たぶん・・・
 やっぱり、梨=秋 だわ、きっと!w 
 お騒がせしてすみませんでした。
 
 「季語」は陰暦によっているものも多いので、難しいです。
 私も苦手でした。
by パキちゃん (2007-09-18 08:30) 

パキちゃん

☆ki_no_ko さん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2007-09-19 19:44) 

たらこ太郎7

読書の秋、いいですね。今年は「食欲<読書と芸術」となるよう努力いたします。
黄桃ってほんとに黄色いんですね!! 「本物」、はじめてみました~(^o^)b
甘い香りが画面を通して届いてきましたよ^^
by たらこ太郎7 (2007-09-22 23:44) 

sei-blog

若い頃 太宰に一気にはまっていた時期がありました。今でも好きですが。
桃、おいしそう・・・。
ところで 作品の方は 黄桃 でしたっけ、桜桃 でしたっけ?
by sei-blog (2007-09-24 14:50) 

パキちゃん

☆たらこ太郎7さん ご訪問ありがとうございます^^
返事が遅れまして、申し訳ございませんでしたm(_ _)m
黄桃、ほんとに黄色いです。
独特の風味、ぜひ一度ご賞味あれ^^
(わーい♪ たらこ太郎7さんが未体験の食べ物、発見w )
by パキちゃん (2007-09-26 17:16) 

パキちゃん

☆sei さん ご訪問ありがとうございます^^
返事が遅れまして、失礼致しましたm(_ _)m
確かに太宰治は、ツボにはまると極めたくなりますよね。
今回、すご~く久しぶりに読み返したせいか、新鮮に感じました。
作品は「桜桃」、さくらんぼの方です^^
by パキちゃん (2007-09-26 17:48) 

れみふぁそら

コメント、ありがとうございます。
今はファーとソラの二匹ですが、その前には「レミ」がいました。亡くなる瞬間まで、しっかりと生きてくれました。
ソラも、短いかもしれないのに、ちゃんと生きてくれます。
なんか、ネコに教わることが多い、そんな毎日です。

これからもよろしくお願いします。
by れみふぁそら (2007-10-03 20:34) 

パキちゃん

☆れみふぁそら さん  こちらにまで、ご訪問ありがとうございます^^
動物は、いつも真っ直ぐに生きてますよね。
>なんか、ネコに教わることが・・・    
ほんとに、私もそう思います。

ウチのミミは、お薬をのまされるのを嫌がって、すごく苦労しました。
いろいろ試しましたが、吐き出すことが多くて;
結局、空カプセルを買って来て、錠剤を砕いて詰めてのませる方法で何とか凌ぎました。

ソラちゃん、お大事にどうぞ。
by パキちゃん (2007-10-05 06:43) 

お久しぶりですね^^
どっぷり秋に浸ってますね。
私も中学くらいの時から本を読み始めましたが、
その殆どが洋書でした。(笑)
結構大人っぽいスタンダールとか(笑)シェークスピアとか、、読んでました。
むちゃくちゃ読み出したのが高校からですが、、。
で、ビィヨンで思いつくのが、
「ビヨロンのため息の身にしみてひたぶるに・・・」ですね~
全く違っていてすいません。Otz
昨日、黄桃ではなく(笑)巨砲が4箱送られてきました。
2人家族で、夫は糖尿予備軍!どうするんでしょう?(笑)
でも、お気持ちは嬉しいですが。
前文も読ませていただきました。
いろいろありますね。試されてるような気がします。
打ち勝ってやろうという気力も湧いてきますよね。
自分の力を信じて、やるしかないです。^^
自分だけじゃないな!と思うと、勇気が出てきます。
by (2007-10-12 12:22) 

畑の帽子

「ヴィヨンの妻」を読もうと 図書館に出向き 予定外の本も数冊借りてしまい ちょっと数日だけ読書の秋となりました。 
  今日は 少々寝不足です。 ^^;
普段あまり読まない ジャンルでしたが 他の短編も含めて ちょっとだけいろいろ考えて妄想が膨らみ、そんな事も 心地よい時間でした。 
 ご紹介 ありがとうございました。
by 畑の帽子 (2007-10-17 17:26) 

パキちゃん

☆風子 さん 
たいへん長い間失礼してしまいまして、申し訳ありませんでした!
もうすでに、どっぷり冬になってしまいました~;
風子さんは、いろいろな本を読んでいらっしゃるようですね。
私の読み方は、1人の作家をだいたい年代順にダーっと読んで、また次に別の作家を同様に・・・という感じが多いです。
「いろいろあってオモシロイ」となかなか言えない状況が続いてましたが、
今、だいぶ落ち着きました。
また遊びにお伺い致します^^
by パキちゃん (2007-12-11 10:18) 

パキちゃん

☆畑の帽子さん 返事が遅くなりまして、申し訳ございませんでしたm(_ _)m
「ヴィヨンの妻」、読まれたということで、記事にした甲斐があったような。。。^^
妄想 ⇒ 想像力 が適度に働くのは、アタマが柔らかい証拠ですからネ!
とってもいいことですよ。
だから私も、文字や語句を一つ一つ目で追いながら、読書するのが大好きなんです。
最近 e-book なども購入しているのですが、(どこかでも書いたけど)あれはゴロ寝して読むことができない、という難点がありますね~;
便利な面もいろいろあるのですけどね。
どんどん話が脇道に逸れそうですので、この辺にしておきます。
心ならずも、不義理ばかりの私ですが、いつもコメントをお寄せ下さいまして本当にありがとうございます^^
by パキちゃん (2007-12-11 10:20) 

eritaro

ご無沙汰しています。
黄桃おいしそうです。
私は桃をむくのがとても下手なので、私にむかれる桃は無惨な姿でとってもかわいそうなんです。
こんな風においしそうにむかれている桃たちは幸せですね♪
太宰治は中学の時、最初に「人間失格」を読んで、心がむき出しな感じが何とも苦しくて、それ以来なんとなく遠ざけている作家です。
大人になって読む太宰作品はまた違った印象になるのでしょうか。
今度読んでみます(^^)
by eritaro (2007-12-12 14:12) 

パキちゃん

☆eritaro さん  ご訪問ありがとうございます^^
お久しぶりです!すっかりご無沙汰しておりまして、申し訳ありません。
黄桃、もうちょっとステキな器に盛り付けて撮影すればよかったですw
黄桃は白桃に比べて果肉がしっかりしているので、むきやすいかもしれませんよ。
太宰治体験は、最初に中学生で「人間失格」だと、確かに息苦しいかも。
今目を通してみると、「あらあら、こんなに繊細だと、世の中でやっていくのは難しそうだ・・・」みたいな~
最近、人生のまだ1歩目も踏み出したとは言えない頃に読んだ本を、また読み返してます。
けっこう新しい発見があったりで、楽しいですよ^^
by パキちゃん (2007-12-13 05:30) 

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