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別に「叙情的過ぎる恋愛」に恨みはないです [気ままにessay]

               
                          シャクナゲ 

   ここのところ、娘はピアノのレッスンでショパンを弾いています。
 本人はシューベルトが好きなのですが、「名の通った作曲家の作品は、一通りせめて2、3曲は暗譜で弾けるように。」との先生の方針で、ここ数ヶ月はショパンなのです。

 この前迄は、映画「戦場のピアニスト」で使われていた「Nocturne(嬰ハ短調)」。これは、とても音質柔らかに巧く弾きこなしていました。
 そして現在習っている曲は、よく知られている「Fantaisie-Impromptu.」(幻想即興曲)。きっと先生は、ショパンが苦手な娘にとって取っ掛かりがよくて、練習時間ももうあまり費やせないことから難解でなく短い作品を選曲して下さったのでしょう。
 でもやはり、娘は「苦手」というか「聴いている分には良いけど、弾くのは得意じゃない」らしいです。

 「シューベルトみたいに曲想にノレない。」
 「チャイコフスキーほど美しくない。」
 「ベートーヴェンより疲れないけど感動的じゃない。」

 まだまだ理由はありそうですが・・・。でも一番の理由は、
 「何故、ここでこの音を弾く!?」
と思わずショパンに訊ねたくなるような、弾く者の予測を外した音を使用することがままあるから、みたいです。
 (でもね、「Fantaisie-Impromptu.」はそのようなことないですよ。ショパンの他の大作やリストに比べれば、殆ど素直なものだ、と私は思います。)

 「ママ、なんでだと思う?なんでこうなの?」
 「さぁー、古典派には無いロマン派らしさなんじゃないの?
  それ迄の既成の概念を打ち破ろうという、流行よ。当時のネ。」
 「でも、気持ち悪いよね、コードから外してて収まりが悪くて。
  しかも割り切れない数の連符を、どうして無理矢理入れる!」

 そこで何気なく私が、
 「きっとね、ショパンは恋人や愛人のこと考えながら曲を作ってることが多かったのよ。」
なんて言ってしまったものだから、話はあらぬ方向へ。

 「はぁ~?どーいうことでしょうか、お母さま・・・」
とこちらに向き直って問われるので、仕方なく続けました。甚だしくも独断に満ちた私の見解を;(かなり長い話でしたので、要約して書きます。)

 「いや、ショパンを弾いていると、いろいろと作為が感じられるわけよ。
 『ちょっと気を惹く素振りを見せる』
 『何か波乱を予感させる』
 『不協和音や音階ガチャガチャで、テンポも気分次第、思いっきり相手の気持ちを掻き乱す』
 『収まりがつかずに不安感を高めておく』
 『そして、ここぞと甘美でトロ~ンとなるような旋律をもって来てウットリさせる』
  と、それ迄のイライラ感やドキドキ感は、なお一層のウットリ感を演出するために利用する重要なプロセス
  として、存在しているのよね。
  それはつまり、多分おそらくショパンの恋愛におけるテクニックと同じだと思うのよ。
  もしくはジョルジュ・サンドのね。
  だから、トラブルの後にもっと仲良くなる、みたいなパターン。
  実際に二人もそうだったでしょ。
  これを音楽で表現していて、言ってみれば本質はメロドラマに近いものが多い気がする。
  そこの辺りが通俗的、と評される場合もある所以ではないかと感じるのよね。
  ショパンの当時から現代でも、絶大なる女性ファンが多いのは・・・。
  ・・・・・あれ?・・なんか話が・・・ま、いいや。
  だからあなたも、イライラさせられてその手に乗せられちゃって冷静さを失って、
  最後は相手の思うツボ、な~んてことにならないようにネ~」

 「ひょえぇぇ~~ーー。。。。。なんじゃそりゃぁw
  私は単に、ショパンは不協和音や連符が弾きにくくてイヤだ、と・・・・。
  なんですか?かつて何かそのようなタイプに恨みでも・・・?」

 「ありません!(キッパリ)
  いいのよ、いろいろ想像していくと面白いから。
  ただ苦手だ、と思いながら弾いてるよりか興味湧くでしょ^^
  ショパンと会ったこともないのだから、事実かどうかはわからないけどねw」

 「そりゃそうでしょーよ;」
 「でも、前に見たTVの番組で葉加瀬太郎さんが言ってたじゃない。
  今にすればクラシックだけど、当時は最新流行の音楽で、人気の作曲演奏家は
  現代のロック・スターみたいな騒がれようだった、って。
  特にリストのリサイタルなんて、演奏が終わって前髪を掻き揚げたら、『キャ~~ッ』
  て嬌声が上がってバタバタ失神する若い女性が続出したらしいわよw」

 「あははっ!リスト、そんな感じだよね・・って、その現場誰が見てたのよ~; 笑えるけどw」
 「ねー^^ ま、そういうお話が残ってるのですって。さ、練習続けて下さい。」
 「いや、もういいです、今日は。ショパンの恋愛論で疲れた~;^^」
 「え~っ;」

 少しでも興味をもって練習できるように、と話したことも裏目に出てしまい失敗でした;

 作曲家にしても作家にしても、それぞれの生きた時代の社会情勢や文化、人間関係を手繰り辿っていくと、それらがどのように作者の精神・心理に影響を及ぼしたか延いては作品に反映されていったかが理解できて、面白いものです。
 そして反発してみたり共感を覚えたりしながら、自分もその作者と一体化して一種の擬似体験をすることにより、より深くその醍醐味を味わえるようになると思えます。
 受験勉強も大事だけど、よい音楽(クラシックという意味ではありません)・よい文学(純文学に限らず)・よい絵画、そして様々な芸術に触れて感性を磨くことも大切です。

 いろいろなジャンルでバラバラにあるように思える頭の中の知識の断片も、それぞれの物事はみんなどこかで影響し合って繋がっている、と理解して感じ取るための感性が枯渇してしまっていると、それこそ「面白くないもの」として意味を成さぬただのデータ止まりですから。

 親子で、受験勉強に忙しいであろうからピアノは高2迄でひとまずやめよう、と話していたのですが、結局娘の希望もあり、取り敢えず高校生の間は習い続けることになりました。
 先生は、「受験勉強のストレス解消程度の曲でやっていきましょうね。^^」
と仰って下さいますが、娘はショパンによって若干のストレスを感じつつあるようですw

 因みに私は、「Ballade」「Nocturne」が(それぞれ何曲かありますが)、どれも好きです。あと、ショパンが故郷ポーランドへ思いを馳せて作った民俗音楽色豊かな曲も趣があり、時々弾いて楽しんでいます。(ここ数年あまり指が動いてくれずに開きにくいため、スンナリ弾けなくなってきたのが残念ですが;)

 だから決して「叙情的過ぎるショパンが好きじゃない」訳でもないのですよね。
 長い年月を経て愛されているいいものは、やはりそれなりに良いということです。


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コメント 8

わたしも、色んなものに触れて感性を磨きます。^^
身に沁みました。がんばります。
シャクナゲ満開ですね。 すばらしい。
by (2006-04-18 19:34) 

パキちゃん

>シンナツさん  nice!&コメントをありがとうございます^^
私もこの記事、自分に言い聞かせるために書いたようなものでしてw
開いたばかりのシャクナゲの花は、本当にきれいな色合いですよね^^
by パキちゃん (2006-04-18 23:12) 

お嬢さんとの会話、話題といい内容といい知的で高尚。
(ウチのドラ息子との会話と雲泥の差です。)
ピアノの練習より、ストレス解消になったのではないでしょうか。
by (2006-04-19 05:12) 

お散歩爺

私も昔ギターの発表会で「パバーヌ」を、と先生に言われ、だれも知らない曲なんて・・・と大部頭に来た事がありました。 やる気全く無し!
併し見て居ろよ~と燃え出して面白くもない曲に打ち込みました、夢中で!
そのうち一計を案じ、超スローで演奏したらと考え・・・・実行しました。
会場は音一つしない静寂の中でのスロー演奏!、大拍手喝采を受けました。
邪道ですが演出したわけです。 そんな昔を思い出しました、ありがとう。
by お散歩爺 (2006-04-19 09:23) 

パキちゃん

>プリンちゃん  nice!&コメントをありがとうございます^^
そ、そんな・・・イイコロ加減な親子の会話ですよ~
ちゃんと音楽を専門になさってる方や、ショパンびいきの方のお目に触れたら
どうしようかと・・;
ウチの子どう見ても受験勉強でのストレスとは無縁のようです。(良いのか悪いのかw)
by パキちゃん (2006-04-19 18:35) 

パキちゃん

>旅爺さん  nice!&コメントをありがとうございます^^
いえいえ、こちらこそ旅爺さんのギタリストとしての一面を垣間見させて頂いて光栄です!
「パバーヌ」って、ラヴェルのですよね。。。残念ながら曲そのものは存じません;
是非聴いて、そしてスロー演奏を想像してみたく思いました^^
by パキちゃん (2006-04-19 18:44) 

タックン

こんばんわ!
ショパンがメロドラマ・・・?なるほど(^^)
感性を磨くことって大事なことだと思います。特に若いうちにいろいろなものに触れることが。
若いときにスポンジが水を吸い込むように吸いとれた感性(外にも内にも)が、この歳になると、努力しても吸い込めない(^^)、ちょっと情けない気持ちなのです。
by タックン (2006-04-19 22:08) 

パキちゃん

>タックンさん  おはようございます、nice!&コメントをありがとうございました^^
いつも、空を流れる雲や散歩道に咲く草花にも目を向けられて、
感じ取られたことをステキな文章や写真で表現なさってるタックンさん、
感性がキラキラ輝いていらっしゃいます^^
by パキちゃん (2006-04-20 06:08) 

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