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古川と廣尾稲荷神社 ~東京 広尾 [街の風景 / taverna]

 前回の記事で、東洋医学総合研究所から出たところに、小さな川があることに触れました。
 「亀屋橋」という短い橋を渡リ終わって目に入った立て看板を見ると、「古川をきれいにしましょう」みたいな言葉が書かれていました。
 何気なく通り過ぎてから「ふるかわ?」と気になり、また戻ってじっくり見てしまいました。
 住んでいた頃は車での移動が多く、明治通りから桜田通りとぶつかる「古川橋」という名の三叉路が馴染みでした。
 信号待ちの間、信号機に取り付けられた「古川橋」の交差点名称標識をいつも見ていて、どこに橋があるのか、古川って川はどこなんだろう、などと考えることが多かったです。
 さらに、「一の橋」「二の橋」「三の橋」「四の橋」などの名称もあるので、川があることは確かなのだろうけど、それらしい姿は見当たらない。
 もしかしたら昔川があった名残の名称なのか、などと思っていました。

古  川

2008.03.27:川の水深は浅そうだったが、30㎝はありそうな魚が数匹泳いでいた。鯉か鮒だろうか。画像の向かって左側は、すぐ横の上方に首都高速が走る。
(亀屋橋の上より撮影)
 「へぇ、本当にあったんだ、古川って・・・」
 元々地元の人たちはご存知でしたでしょうが、私は利便性から通りすがりのように一時期住んでいただけ、しかも当時の興味の対象に「川」は含まれておらず、気にはなったもののそのままで、いつしかその地も離れて全く忘れ去っていたことでした。
 古川は渋谷区を流れる渋谷川と同じ川で、港区に入ってから東京湾に流れ込むまでを「古川」と呼ばれているそうです。
 帰宅してから調べたところ、この川の殆どの区間で、首都高速道路によって覆われていたり近接していて陰になっていることが分かり、所在に気づかなかったのも道理とも思えました。
  (参考:渋谷川・古川流域連絡会
 首都高速道路建設用地の確保に、苦労があったためでしょうか。
 昔は人々の生活に密接だった中小河川が、水運にしても用水にしても、近代的な設備や文明の利器によって、文字通り日の目を見ない陰へと追いやられている感じです。
 ふと、やはり首都高が上を通っているために、排気ガスまみれで薄暗い「日本橋」のことが思われました。
 現在の街の中の川の姿は、本当に私たち(現代の日本人)が求めていたものなのだろうか。。。 と、いろいろ考えさせられました。
 
 さて、前記事にある桜を見た後の話ですが、地下鉄広尾駅に向かって歩いて行くと、外苑西通りに出る手前に庚申塔(こうしんとう)と廣尾稲荷神社(ひろおいなりじんじゃ)があります。

庚 申 塔

2008.03.27:広尾の庚申塔は、東京都港区指定文化財。右端の年代不明のものは、確かに他の二つよりも傷みが目立ち、古さを感じさせる。
 中央の塔は元禄3年(1690年)、向かって左の塔(画像では左の柱に隠れています)には元禄9年(1696年)とあって、右の塔はそれらよりも以前のものらしいのですが、年代は不明だそうです。
 「当時から広尾の原の西にあたる路傍にあったものと考えられる。」と説明板に記されていました。
 現代では 庚申信仰・庚申待 は、殆ど廃れたと思える民間信仰ですが、このように残されている庚申塔やそこに活けられている新鮮な花を見ると、今の時代の人々の心に伝わり根ざした慣習が、静かに息づいていることが感じられて興味深いです。
 そしてこの庚申塔に隣接して、先にあるのが廣尾稲荷神社です。

廣尾稲荷神社

2008.03.27:港区指定文化財であるという、社殿天井に描かれた高橋由一画伯の日本画を見たかった; 稲荷神社というと、あちらこちらに赤い色が目に付くものだが、ここは違っていた。
 廣尾稲荷神社は、慶長年間(1596~1615年)、徳川二代将軍秀忠公の勧請により建て祀られ、商売繁昌、五穀豊穣、火伏の神として信仰を集めています。
 時間の都合で外から撮影するだけで帰路に着きましたが、WithFox ~東京の石狐めぐり~ というサイトを閲覧すると、社殿天井の絵画や狛犬、おキツネさんの像など見どころがいろいろとあったようで、お参りしなかったことを残念に思いました。
 次の機会には、是非お参りしてみたいです。

 今でこそこの辺りは瀟洒なビルが建ち並び、セレブな印象の店舗や人が集まる街ですが、明治から暫くは、江戸の時代に「広尾の原」と呼ばれた自然が残る郊外の風景だったそうです。
 橋を渡りながら、陽光にきらめき流れる川面に映る魚影を愛でたり、行灯の灯火揺らめく中に寄り合い、庚申待で酒盛りしながら話し、笑い、朝まで集う・・・・。
 そんな、かつては確かにあった人々の暮らしに、想いを廻らせたひと時でした。
 

廣尾稲荷神社


  
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飛騨の忍者 ぼぼ影

そうですね。古き良き場所ですね。
by 飛騨の忍者 ぼぼ影 (2008-03-31 13:14) 

スー

おお、いいですねえ。
by スー (2008-03-31 17:24) 

真夏

古川、見つかってよかったですね。
昔はあったけどもう無いってことたくさんありますからね^^
by 真夏 (2008-03-31 20:39) 

タックン

街中に庚申塔が残されているのですね。
その昔 どんな人々が どんな思いで
手を合わせていたのでしょう。

久しぶりの思い出の地散策だったのですね~
パキちゃんさんに どんな青春時代があったのでしょう
そのことの方に 思いを馳せてしまいました^^


by タックン (2008-03-31 20:42) 

パキちゃん

☆飛騨の忍者 ぼぼ影さん  初めまして。ご訪問頂きましてありがとうございます^^
表通りから一本裏へ入ると、まだ昔ながらの佇まいが所々残っていますね。
心惹かれて趣を感じた散策でした。
by パキちゃん (2008-03-31 23:36) 

パキちゃん

☆ki_no_koさん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-03-31 23:38) 

パキちゃん

☆スーさん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
古いものの周りは、空間の質感がしっとりとしているのですよ。
光や音を吸収してくれる感じ、とでも言いましょうか。
表通りは、光をいろんな角度に反射して、音が飛び交っている感じです。
by パキちゃん (2008-03-31 23:53) 

パキちゃん

☆真夏さん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
そうなんです、古川が見られて、なんだかとても嬉しかったです。
過去に、自分が気づかなかっただけなんですけどね。
疑問に思っていたこと自体も忘れていましたけど;^^
by パキちゃん (2008-04-01 02:48) 

パキちゃん

☆タックンさん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
そこに思い出がある、というだけで、唯の通り道ではなくなるものですね^^
当時若さと○貌をかさにきて、ブイブイ飛ばしていた自分がフラッシュバック!
な~んてねw でも、ものすごい回転数でエンジンが回っているような生活でした。
by パキちゃん (2008-04-01 02:57) 

パキちゃん


☆納豆(710)な奇人さん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^

☆takagakiさん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^


by パキちゃん (2008-04-01 07:55) 

畑の帽子

東京にはちょっとしたところにそんなふうにかつての生活を思い起こさせる場所や物が点在しているのですね。
庚申さんではないのですが夫と郷里のお祭りの話をしていて朝まで大人も子供も飲み食べ唄い、舞い(神楽)を見て、語り明かしたと聞いてイメージがダブりました。
by 畑の帽子 (2008-04-01 08:00) 

パキちゃん

☆畑の帽子さん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
東京でも下町ではよく目に付くのですけどね。
ここの辺りから青山にかけては、表の顔とのギャップがまた魅力とも言えます。
ご主人様のお祭りの思い出に、うかがっているだけでもワクワクして来ました^^
by パキちゃん (2008-04-01 09:06) 

旅爺さん

四国は高知のはりまや橋みたいですね。
今は広い道路で橋も無く川も無く、・・で 橋を作ったとか?。
当地の川でヒューム管を埋めたので無くなってしまったところもあります。
by 旅爺さん (2008-04-02 12:27) 

みほ

今でも有栖川公園のすぐ近くに 和食の有栖川ってあるのかな?
子供が小さいころ 検診のついでに
時々よってました 
私も 懐かしい場所です♪ 
by みほ (2008-04-02 21:24) 

パキちゃん

☆旅爺さん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
土地の呼び名や地名として名を残すのみの川や橋は、けっこうあるのでしょうね。
でも、あの有名な「はりまや橋」がそうであったとは!
初めて知りました;^^
by パキちゃん (2008-04-03 08:18) 

パキちゃん

☆みほさん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
懐石料理の「有栖川清水」のことでしょうか?
残念ですが、ちょっと分かりません;
あ・・・もしかして検診というのは、あの病院でしたっけ、息子さんのお誕生は。
(私が生まれた病院と一緒だ、とお話した記憶があるような。違っていたらごめんなさい;^^)
by パキちゃん (2008-04-03 08:55) 

パキちゃん

☆風子さん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-04-04 05:06) 

春分

少し意識してみると、「昔」の痕跡があちこちにありますね。
そんなことがわかってきたような、気がします。わかってないと思いますが。
by 春分 (2008-04-04 17:51) 

パキちゃん

☆春分さん  ご訪問頂きましてありがとうございます^^
過去の遺物としてでなく、現代でもひっそりと生きている「昔」に心惹かれます^^
そういうものがなくなったら、味気ない街になるようにも思えます。
by パキちゃん (2008-04-05 08:59) 

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