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気になって気になって起きられない [気ままにessay]

先ほどいきなり父が訪ねて来ました。
まあ、遠方からではなく隣からなので、そこは驚くところではないのですが・・・

玄関を開けるなり、
「春死ぬ!春死ぬ!春死なん!」
と言う。

「はあ~?」

なんでしょ、こりゃ いよいよボケたかな?(@_@;)
焦りましたよホント。

で、つっかかり引っかかり、漸く説明したところによると、父が私に誰が詠んだか訊いたことがある歌のことだとな。
そして、
「それがどうしても思い出せないのだ!早くまた教えてくれぃ」
とのたまふ。

「そんなこと私訊かれたっけか… いつ頃のこと?」
「この前だよ」
「(知らん) この前って、どれくらい前よ」
「5、6年前」
「・・・・」

はいはい、もうさっきのことも10年前のことも「この前」で一括り。
いや、でも確かにそんなことがあったような気がしないこともない。。。。

そこでまた、私の思考をぶった切る
「花の下!!」
との父の声。

「!! うん、そんなことあったね!」
至近距離にも関わらず、互いに大声。
熱血親子というわけではないです。父の耳が遠いため。

「分かった! 願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ 西行っ」
「え~?」
「西行!!」
「なに~?!」

いや、喉痛いし偏頭痛出てるのに頭に響くよ。
急いでメモを取って来て書きました。
それを見た父は破顔一笑。
「これだ、これだ! この歌だぁ」ヽ(*>∇<)ノ

はぁ~ 良かった、話し通じて思い出せて。
「ありがと、ありがと」
と嬉しそうに走り書きのメモを握りしめて、父が帰ろうとした時に言ったのがタイトル。
「いやー、俺 もう気になって気になって起きられなかったんだよ」
ですと。

夢か現か、時さえも超越した幸せの境地にだんだんと近づいている父の後ろ姿に
『いつまでも長生きしてほしい』
と思った私でした。


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