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私たちは失われた砂浜を取り戻せるか? [自然]

 この20年ばかりで、私が住まう茅ヶ崎市の海岸線の景観は、ずい分と変わってしまいました。
 それでもまだ娘が幼い頃には、潮が引いて長く続く砂浜で、取り残された小さな生き物を観察したり、白く泡立ちながら引いていく波を遠く追いかけて、転がるように走ったりしたものですが。。。
 湘南海岸では過去約40年間で、なんと多いところでは、沖に向かって50m.以上も砂浜が失われてしまっているそうです。

 私がいつも散歩を楽しむ海岸も、今では、サイクリングロードやウォーキングボードを越えるとすぐに、砂地が崖のように急斜面で落ち込み、そこがもう波打ち際という有り様。
 家族間ではもとより、ボランティアの海岸清掃に参加するたびに、見知らぬ人同士でも「このままでは大変なことになりますね」などと話したりするくらいです。
 少し西に行ったところに、人工の岬「ヘッドランド」を造ったために、その周りだけは何とか砂浜らしきスペースができて来ましたが、本当にそこの処だけ; 
 美しい湘南海岸の景観は、いまや茅ヶ崎にとっては過去の話。
 この海岸に親しみ暮らしている私たちにとっては、看過できない危機的状況であるとすら言えるのです。

江の島を眺めながら汀を散歩する楽しみも今は昔:2008年03月08日
気をつけないと足に波を被るくらい波打ち際が迫っています

 これは何も単に、観光資源としての景観を保つべき、というだけの話ではありません。
 防災の面から見ても、大きな問題であると言えましょう。
 先月2月24日に富山県入善町で発生した高波は、「寄り回り波」という特有の原因ではありましたが、やはり侵食された海岸も、被害を更に甚大にした一因と考えられると、昨日(8日)のTVの番組<NHK総合テレビ 午前10:32~ 地域発リポート▽巨大高波はなぜ起きた(富山)>でも報じられていました。
 つまり、高波が陸に向かって来ても、砂浜がある程度の幅であれば、そのスピードやエネルギーなどがそこを渡る間に徐々に減衰しますが、砂浜が無く単に低めの崖のような場合は、一気に押し寄せ水位を高めて乗り越えてくる、というわけです。
 ・・・我が家は、「目前が海」とまで至近ではないですが、それでも他人事ではなく感じています。

 では、いったいどうして、このように砂浜が侵食されることとなったのかについてですが、これは複数の原因が複合してもたらした結果だとされています。
 ・茅ヶ崎の海岸が元々堆砂しにくい地形である。
 ・相模川上流に建設された「相模川水系広域ダム」の影響で、本来相模川河口まで流れ至って周辺まで拡がっていた砂礫が運ばれなくなった。
 ・少しずつの地殻変動(地盤沈下)や温暖化(海面上昇)の影響。
 ・台風の高潮などで、砂浜が削られた後の修復が追いつかない。
 私が知っているだけでこれくらいで、他にもまだあると思いますが・・・。

 鎌倉市や平塚市でも、やはり大幅に砂浜が後退して来ている場所があるということです。
 この問題は、茅ヶ崎市としてのみならず、神奈川県としても深刻に捉えられて久しく、行政レベルで湘南海岸の砂浜の侵食をくい止める対策と保全に努めているにも拘わらず、侵食の勢いに比べると、その成果は遅々として進みません。

 (興味のある方、お時間が許されれば、こちらをご参照下さい。
  なぎさシンポジウム概要版
   〘テーマ「山・川・海の連続性を捉えたなぎさづくり」。現在の湘南海岸の状況の報告など。〙
   第3回茅ヶ崎中海岸侵食対策協議会議事録
   〘「湘南海岸(相模川~江の島)の近年の土砂移動」など。〙
  第1回茅ヶ崎中海岸侵食対策協議会
   〘平成18年度の資料ですが、海岸の空撮画像が多く掲載されています。〙)
 ( 「茅ヶ崎中海岸(なかかいがん)」とは、JR茅ヶ崎駅から海沿いの国道134号線に出る通称「雄三通り」よりも西側の海岸、茅ヶ崎漁港がある辺りです。)

 そして、昨日の夕方近く、海岸を訪ねてみると。。。。!

砂の山がいくつも出現:2008年03月08日
向かって右側が海です

なんとなくしっくり来ない風景:2008年03月08日
どこの工事現場か?と思いました

 ショベルカー数台と砂の山が幾つも築かれていました。
 工事の関係者の方にお話を伺えました。
 これは、ヘッドランド周辺に堆積した砂の一部を、東側の侵食の激しい箇所に移して補充するための工事だそうです。
 (私のことを『何かの活動家か;?』とでも思われたのか( まさかね~、薬品のビンを投げつけたりしませんって;)、初め少々構え気味でいらっしゃいましたが、すぐに丁寧に教えて下さいました。)
 お話を聞き終えて歩き出すと、近くにいらっしゃった数人の人たちから声を掛けられ、尋ねられました。
 皆、やはりこの砂浜の現状を憂え、「これらのショベルカーたちが、砂浜を取り戻すための何らかの対策で乗り入れられているのであろう」と、想像はしていたけど確認したい、みたいな感じの様子でした。
 この海に親しむ人たちにとって、本当に大きな関心事であり、問題です。
 大きな視点から見れば、茅ヶ崎や神奈川に限らず、ではないでしょうか。

工事の関係の看板が一定距離で立てられている:2008年03月08日 キャタピラーの跡をジャンプしながら超えて行くワンちゃん:2008年03月08日  どちらも、つんのめるような砂の坂です

 あるがままの自然の状態で、砂浜が侵食されていくことは仕方が無いですが、例えば漁港やダムを造ったりなどの人工的な干渉や関与をし続けることも大きな要因である現状は、ある意味必至のことであったとも言え、気づくのが遅すぎた、または気づいても認識が甘かったツケが回って来たのだと思います。
 この湘南海岸地区の海岸侵食をくい止め、砂浜を再生させるのに、この先どれくらいの年数がかかるのか分かりません。
 また、それが成し遂げられるのかどうかさえも・・・。
 でも、何とかしたい、しなければならないとの思いは、誰もが強く持っています。
 実際、行政に働きかける市民の力は、その一人一人の「関心」であり、「問題」と捉える「意識」であり、自分でできることを「実行」することですから、それらがある限り「砂浜の再生」に希望はあります。
 (あると信じたい。)
 
 とかく自然と対立しがちな人間も、本来はその一部。
 大きなサイクルの中で、未来も存続し続けるために、自分たちが自然の一部であることに喜びを見出しながら生きていけるように、知恵を使っていきたいものです。
 
沖合い左に見えるのは烏帽子岩:2008年03月08日
海を眺めるご老人の足元は砂の崖・・・何を思われていらっしゃるのでしょうか。。。 



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コメント 17

みほ

築き上げるのは 相当な時間がかかるものですが
崩れるのは 一瞬ともいえるのでしょう 
自然の声に 耳を傾けなきゃいけないのですね
by みほ (2008-03-09 21:03) 

たらこ太郎7

1日1日では変化は気づかないけど、実際はこの一秒にも変化は起きてますからね。

ひとりひとりの力のうねりは大切、無関心が一番いけません!
ちなみに学生時代にバイクでよく夜更けに遊びにいきましたが、国道から防砂林ぬけててくてく砂浜を結構歩いて記憶があります。
その前に高波注意だか子供向けかもですが、ザブーンと波がかかる海坊主の絵の看板も思い出しました!
by たらこ太郎7 (2008-03-10 01:20) 

パキちゃん

☆xml_xslさん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^

by パキちゃん (2008-03-10 07:35) 

パキちゃん

☆みほさん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
そうですよね。
人間の生活に便利なように自然に手を加えて来たことが、多くの問題を生んでいます。
またいつか、この砂浜で、パラソルの下のんびり寝そべって過ごしたりできる日が来るといいのですが・・・。
by パキちゃん (2008-03-10 07:58) 

パキちゃん

☆takagakiさん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
by パキちゃん (2008-03-10 07:59) 

パキちゃん

☆たらこ太郎7さん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
自分の周りに無関心であることは、結局自分にも無関心ということになりますね。
この海岸の様子は、見るたびに心が痛みます。
>海坊主の絵の看板・・・
 そうそう、ありましたねー!^^ (あれ?今はどうだっけか。。。)
by パキちゃん (2008-03-10 08:28) 

パキちゃん

☆スーさん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
by パキちゃん (2008-03-10 08:29) 

真夏

わ~、大変なことになっているのですね。
自然と上手に共生できるようになっていきたいですね。
砂浜、戻るのだろうか...
by 真夏 (2008-03-10 10:53) 

パキちゃん

☆真夏さん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
そうなんですよ~; ひどいものです。
いつも写真に撮っている所はヘッドランドの周辺で、あまり目立ちませんでしたが、
砂浜が消失している箇所が多いのです。
海も砂浜も川も山も、どれも個別に存在しているものなど無いのですね。
by パキちゃん (2008-03-11 01:31) 

風子

おはようございます。
原因が幾つか分かっていても、
対処の方法が追いつかないという事でしょうか?
自然が崩壊されていく事が、後々人類の滅亡に繋がります。
意気盛ん!?に生きてきた各国各個人のツケが、
至る所に現れてきているんですね。
昔のように・・・夢のまた夢なんでしょうか?


by 風子 (2008-03-11 08:34) 

畑の帽子

大変な事になっているのですね。 
地球を痛めつけ続けてきたツケガまわってきた とまとめるには大変過ぎる今の地球環境のように思います。
 
河口堰の問題はあれこれ聞いた事がありましたが、まさか上流のダムと砂浜の状態に関連が生まれるとは…。でも、山の植栽の状況と河口の辺りや海に関連があるくらいですからね。

「あれ?」と思ったときに立ち止まらず「大したことがないだろう」と通り過ぎる。結構これが普通だろうと思いますが それじゃいけなかったんですよね。いつもこういった問題に触れたときに心に刻むのですが「これからでもできること、個人でもできる事を心がけよう」と。
by 畑の帽子 (2008-03-11 11:02) 

パキちゃん

☆風子さん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
この工事も、各分野の専門家も加えての対策を講じている一環のものですが、何しろ時間は掛かるようです。
砂なら何でもよいわけでなく、本来あるべき砂を投入すべく、この人工の岬によって海流に流される砂をキャッチして堆積させ、それを周りへ拡げて補充するという流れです。
(これは何十年も掛かりそうです;)
変化は自然につきものであることを思えば、たとえ人間が関与していなくとも、砂浜もいつかは無くなる運命なのかも知れませんが・・・。
海辺に集う人たちは、この人為的にできた砂浜に多く見かけます。
砂浜が恋しいのですよね、やっぱり皆;^^
by パキちゃん (2008-03-11 21:28) 

パキちゃん

☆畑の帽子さん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
本記事でリンクした「なぎさシンポジウム概要版」中にあるパネルディスカッションでの松沢神奈川県知事の言葉にもあるように、自然の利水と生活のための治水のバランスをとることが大切だと感じています。
あるがままの自然を残したいのはやまやまですが、人が生活していく上でそれはなかなか難しい・・・
全てのものは影響し合い、繋がっていることを感じずにいられません。
ならばこの件についても、誰にでも何か役割があるはずだ、と砂の崖の上から海を眺めて思いました。
by パキちゃん (2008-03-11 21:57) 

パキちゃん

☆ki_no_koさん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
お久しぶりです^^
by パキちゃん (2008-03-11 21:59) 

畑の帽子

再度失礼します。
今コメントを読み返して見ましたら「風子さん」のコメントにある意味否定的な書き出しのように感じられましたので一言。
決してそのような意味ではありませんので、お許しくださいね。前後のコメントの流れを考えて表現するべきでした。

人は便利な生活を求めすぎたのでしょうか? と、最近友人と話しました。
今はとにかくパキちゃんさんたちの生活が脅かされるような事にならない事を祈っています。

by 畑の帽子 (2008-03-12 09:41) 

パキちゃん

☆畑の帽子さん
^^  前コメントのこと、きっと大丈夫ですよ。

>人は便利な生活を・・・
  便利な生活⇒生き易い⇒種の繁栄 と捉えるとすれば、これは本能とも言え、動物・昆虫・植物など生き物全てに通ずることなのかも知れません。
繁栄し過ぎて絶滅しないためにも、と言うか少しでも絶滅の時期を遅らせるためにも、やはり自然(他の生き物や環境、地球全体の意)とのバランスを考えていくのが必要と思います。
過去の失敗から学び、よりよい方向に前進していくしかありませんね;^^
ご心配ありがとうございます。
  
by パキちゃん (2008-03-12 14:21) 

パキちゃん

☆春分さん  ご訪問頂きましてありがとうございました^^
by パキちゃん (2008-03-23 11:32) 

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