これを残月と呼ぶか、有明の月と呼ぶか [気ままにessay]
この月は、1月25日の夜明け頃のものです。
門に出て、西の空へと顔を上げたら、目に入りました。
まず、「あ、残月・・・」 と。
この月の凍てついた白い光が美しく思われ、キーンとした冷気を全身に感じながら、カメラに収めました。
寒さに屋内へと逃げ帰り、次に思い浮かんだ言葉が、「有明(ありあけ)の月」。
「残月」は熟語ですから漢語で、これをやまと詞で言い表すと、「のこんのつき(残りの月)」と言います。
一方、「有明の月」の「有明」とは、そのもので「明けてもまだ有る(月)」の意味を持ち、「有明の月」とは、まあ言ってみれば 「夜が明けてもまだ空に有る月の状態の、(この、その、あの、etc.)月」 みたいな言い方でしょうか。
単に表現の違いだと言えばそうなのですが、面白いなぁ、と思うのですよ。
「残りの月」=「明けた空に残っている月」 と見るか、「明けた空にまだ有る月」 と見るか、ということではありません。
これはほぼ同意ですからね。(「残りの月」は、何となく「残りもの」みたいな感じがしないこともないですが。)
もともと中国において、「残」の文字にはあまり良い意味はありません。
私たち日本人も使用する「残虐」「残酷」などの熟語からもうかがえるように、漢語において「残」の字の第一義は「そこなう」、第二義は「そこない」「害」、第三義は「むごい」、第四に「悪い」と続きます。
五番目の字義として、漸く「残る」「残り」などの、日本で「のこる」「のこす」と訓読みする場合の意味が出て来るのです。
では、中国語として「残月」と記したら、どのような意味に日本語訳されるのかと言いますと、「夜明けの空に消えそうになっている月」となります。
一見すると、「な~んだ、さしたる違いはないじゃない」と言われそうですが、これが微妙に違うのですよね。
もう少し噛み砕いて言い表しますと、「夜明けになって太陽の光が差してきたため、本来の姿が損なわれて、薄く消え入りそうに見えている月」 みたいなところかと・・・。
このように考えていくと、「明けた空にまだ有る月」との表現との違いが、どことなく感じられませんか?
実際、「残月」のことは「のこんのつき」という言葉をあてていたわけですから、昔の人も、「有明の月」とは別、という意識があったのでしょうか。
現代と比べて、月に対しての感性が遥かに豊かであった時代、その微かな明るさの違いで表現し分けていたのかも知れません。
でも、和歌などで好んで詠まれるのは圧倒的に「有明の月」ですよね。
やっぱり昔の人も、「のこんのつき」じゃぁ 「残りものの月」 みたいでイヤだったのかな~、なんて^^;
語感がキリッとしててカッコイイせいか、「残月(ザンゲツ)」と言いたいところですが、この月は「うっすらと」ではなく輝いていたことと、見上げた時に「ああ、夜が明けても、まだ西の空に月があるなぁ」 と感じたことから・・・
これは「有明の月」と呼ぶことにします^^
しがの浦やとほざかりゆく浪間より こほりて出づる有明の月
(新古今集) 藤原家隆
朝ぼらけ有明の月とみるまでに 吉野の里にふれる白雪
(古今集)(百人一首) 坂上是則
訪問頂きありがとうございました。
by U3 (2008-01-31 21:55)
松と 月なんて 風流ですね♪
by (2008-01-31 22:44)
有明の月、いいですね。
私もそう呼ぼうと思います。
冬休みにフィンランドにいった女の子が、「朝なのにお月様でてて、まだお昼なのに夜みたいなの。寒くて泣いちゃった。」ってお話ししてくれたのを思い出しました。
by (2008-02-01 05:21)
有明の月、これから早朝の月を見つけたらそう呼ぶことにします。
残月は シャープなイメージ(単に私の中で時代劇のイメージなんですが)を持ちます。
キーンとした空気の中で月を見ているパキちゃんさんの姿を想像してしまいました。私ならモコモコ上に着ていそうですが パキチャンさんは背筋をしゃんと伸ばしていそうですね。^^
by 畑の帽子 (2008-02-01 08:07)
☆U3さん こちらにまでご訪問頂きまして、こちらこそありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-02-01 09:30)
☆みほさん ご訪問ありがとうございます^^
夜明けの月がキレイに撮れるカメラが欲しいなー
なんて、風流とはかけ離れたこと考えて撮っていました;^^
月と松、絵の題材にもなりますね。
by パキちゃん (2008-02-01 09:35)
☆スーさん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-02-01 09:36)
☆トントコプリンさん ご訪問ありがとうございます^^
白夜ですね? 両親が北欧を旅したあと、やはり言ってました。
子ども達が夜中も外を走り回って遊んでたって。
私も白夜体験してみたいなぁ・・・まるまる一日遊びたいです!(意味チガウ?)
by パキちゃん (2008-02-01 09:42)
☆畑の帽子さん ご訪問ありがとうございます^^
>残月は シャープな・・・
そうなのですよね。「有明の月」は、柔らかくのんびりした感じです。
写真はこの1枚のみ撮り、即家の中でした^^; 背すじ、丸まってました。きっとw
by パキちゃん (2008-02-01 09:56)
とっても難しいですが、勉強になりました。
有明の月、みてませんね~。
ここのところ天気悪くて見れません。←言い訳^^
朝早く起きられない^^;
by (2008-02-01 10:14)
今朝方、積雪は?と、外を見たら、
おおいぬ座と 南西に月が見えてました。^^
何気なく見ましたが、こちらで話題に上っているとは。
有明の月・・雰囲気的に夢がありますね。
残月というと、時代劇に出てくる寒々しいイメージです。(笑)
偏見でしょうか?^^
by (2008-02-01 11:43)
☆真夏さん ご訪問ありがとうございます^^
えーとですね、これは「損なわれている月」か「まだ有る月」かという、
マイナスに捉えるかプラスに捉えるかみたいな・・・そのようなところです^^
私は家人が朝早くに出掛ける日は、起きられないので寝ません;(不健康~)
by パキちゃん (2008-02-01 15:00)
☆風子さん ご訪問ありがとうございます^^
>偏見でしょうか?・・
いえいえ、そう思われる方多いようです^^音から受ける印象って、大きいですよネ。
風子さんのご覧になった外の様子は、坂上是則の一首のような情景でしょうか^^
by パキちゃん (2008-02-01 15:01)
月一つでも色んな見方、考え方がありますね。
今宵また 眺める月は 昨日の月 爺はセンスないですね。
by お散歩爺 (2008-02-01 19:15)
☆xml_xsl さん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-02-01 21:01)
☆旅爺さん ご訪問ありがとうございます^^
俳句ですね^^ センスないなんてことございません、奥が深いです!
では、憚りながら私めも。。。
「娘十九 いつの間にやら 母 残月」 なーんてネw
by パキちゃん (2008-02-01 21:06)
月はただ月であるだけなのに、見る人の心持ちを映す鏡でもあるんですね。
by eritaro (2008-02-01 21:57)
☆eritaroさん ご訪問ありがとうございます^^
一つのものごとに対して、いろいろな表現や名前があるのが面白いです。
ごく小さな違いにも敏感に、一つ一つ言い分けてることがらなど、要チェックですね。
それは、人の心や感性や意識を向けさせる、何かを有しているということですから^^
by パキちゃん (2008-02-02 00:53)
お邪魔してます。いい感じでまん丸のお月様だすね~
by パルの大冒険 (2008-02-02 18:42)
こんばんは。
とても面白く読ませていただきました。
土日は だいちゃん(犬)の散歩で まだ明けきらぬ前に
出かけますが 今の時期 くっきりと月が残っているのが見えます。
残っている・・と 私は残月のイメージなのですが^^
有明の月というと まだ消えていかない月へのいとおしさみたいな
ものを感じます^^
by タックン (2008-02-02 22:25)
☆パルの大冒険さん ご訪問ありがとうございます^^
月は、皓々としていても見ることができるからいいです。
太陽だとそうはいきませんからネ。
月と目が合ったようで、うれしくなりましたよ^^(狼女じゃないですが;)
by パキちゃん (2008-02-03 05:38)
☆タックンさん お早うございます^^ ご訪問ありがとうございます。
日本では「残る」に良くないイメージはあまりないですものネ。
「残」の一~四番目の字義にあてはめて、あと思いつくのは「サービス残業」・・?w
「有明の月」を眺めながらのお散歩と聞けば、静かな雰囲気を想像しますが、
そこにだいちゃんの姿が一緒にあると、ウキウキした感じになります^^
by パキちゃん (2008-02-03 07:52)
☆ ☆空風さん 初めまして。 ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-02-03 07:52)
☆きぃ*さん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-02-04 02:51)
明け方の月、その日の情景でイメージが違いますよね。
昔の人はそれをしっかりと使い分けていたのでしょうね。
by (2008-02-05 07:17)
☆にの♪さん ご訪問ありがとうございます^^
現代では月の明かりのありがたみが忘れ去られていますね。
夜山道などを歩くと、月光の明るさに驚きます。
満ち欠けがあるところが、またいにしえ人の風流心をくすぐるのでしょう^^
by パキちゃん (2008-02-05 17:12)
☆春分さん ご訪問ありがとうございます^^
by パキちゃん (2008-05-14 12:35)